平和首長会議による公開書簡が発出されました

 昨年、国連総会において核兵器の廃絶に向けた法的措置などを議論する公開作業部会の設置が決議され、1月28日(木)、スイス・ジュネーブで当作業部会の組織会合が開催されます。
 これに先立ち、平和首長会議では、下記のとおり、国連加盟国と国連事務総長に対し、積極的な参加と核兵器廃絶に向けた積極的な議論を呼び掛ける公開書簡を発出しましたので、お知らせいたします。


平和首長会議による公開書簡
核兵器のない世界を目指して:10億市民の訴え

 1945年8月、広島・長崎両市は、それぞれ一発の原爆により廃墟と化し、その年末までに、両市合わせて21万人を超える尊い命が奪われました。かろうじて生き残った被爆者の方々も、人生は一変し、限りない苦しみは、70年後の今も続いています。筆舌に尽くしがたい体験を経た被爆者は、「こんな思いを他の誰にもさせてはならない」という深い人道的信念から、核兵器廃絶を訴え、平和への願いを世界中の人々に粘り強く発信し続けています。

 我々平和首長会議は、市民の安全と福祉を守る市長としての責任感の下、この「ヒロシマ・ナガサキの心」に深く共鳴し、核兵器のない平和な世界の実現を目指し、また、平和と持続的発展の実現を目指す活動に力を尽くす、超党派の国際的な非政府組織です。現在、161か国・地域から6900を超える都市が加盟し、総人口は10億人を超え、その数は現在も増加しています。この度、全加盟都市を代表してこの書簡を綴っています。

 我々は、冷戦終結から四半世紀を経過した今もなお、暴力が蔓延し、紛争の種が絶えない世界に、推定1万6千発近くの核兵器が存在するという現実に深い憂慮を抱いています。しかも、記録公開により、仮に意図せずとも、誤解や事故により核兵器が使われる可能性が相当に高いことが明らかとなってきました。核テロの危険も無視できないものです。核兵器使用がもたらす破滅的な影響を考えれば、この恐ろしい兵器の廃絶には、全ての国と市民の利益が関わっており、一刻も早い対処が必要だと訴えざるを得ません。この関連で、我々は、戦略核兵器の配備数削減や、核実験一時停止の継続、といった面において、限定的ながらも進展が見られることを歓迎しています。これらの努力は大切なものです。しかし、残念ながら、それのみでは不十分です。

 約2,000発の核兵器が即応態勢にある中、世界の安全保障体制は、相互不信を背景に「抑止力」という核兵器使用の脅しとそれに伴う言語に絶する恐怖に大きく依存しています。このような仕組みはそれ自体、危うさを内包しており、また、核拡散の脅威、例えば北朝鮮の核開発のような困難な問題をも誘発する危険性をはらんでいます。そもそも現今の深刻な国際問題の根本的な解決に核抑止という仕組みがいかなる有用性を持っているのか、改めて検証する必要もあるでしょう。このような状況を考えれば、国際社会が総力をあげて協議し、現実の課題にいかに対応していくかを議論すべきです。とりわけ核兵器国と核の傘に依存する国々が今こそ真剣に議論を重ね、核抑止に依存しない安全保障を検討することが急務です。また、そうした努力を追求する上で、相互不信を乗り越え、同じ人間としての同胞意識を促進するために、市民社会が果たし得る重要な役割も忘れてはなりません。

 一方、我々は、国際社会の中で、核廃絶を実現する時期、範囲、手順について多くの意見の相違があることは承知しています。しかし、核の危険の問題は避けて通れないことも明らかです。だからこそ、我々は、世界の為政者に、このような政策論議を速やかに進めることを期待するとともに、是非、広島・長崎を訪れ、被爆者の声に耳を傾けてもらいたいと考えます。

 このような議論を進める具体的なステップとして、我々は、全ての国々、とりわけ核兵器国と核の傘に依存する国々に対し、昨年の国連総会において決定された核廃絶に関する公開作業部会の討議に積極的に参加して、それぞれの立場を超えて建設的な議論を始めることを強く求めます。作業部会が動き始める前に全ての問題について世界的な合意に達している必要はありません。しかし、立場を超えた真剣な議論を尽くし、合意点を見出すための方法を建設的に話し合わなければ、今後の進展は見込めません。
世界的な核廃絶は、全人類を巻き込んで初めて実現するものであり、全ての国がそのプロセスに参加する必要があります。非核兵器国も、一旦核兵器が使われた場合にはその被害国になりうると言う意味で、核軍縮に直接利害を有する国々です。この公開作業部
会は、核兵器国及び核の傘に依存する国々にとっても、核廃絶を求める幅広い市民社会の声及び多くの非核兵器国の声にも耳を傾けるよい機会です。

 なにより、公開作業部会は、検証可能性・透明性・不可逆性の問題等、核軍縮プロセスにおける現実的な課題に国際社会が取り組む絶好の機会です。また、核兵器のない世界の実現にかかるリスクと利益や、必要な法的枠組みについて、真剣に議論する場として
も適切です。この偉大かつ歴史的な目標を成し遂げるための課題について世界的な理解を深める貴重な機会なのです。

 我々平和首長会議も、市民社会の一員として、核兵器のない平和な世界を願う立場から、公開作業部会の議論に参加するつもりです。我々は、核兵器の法的禁止こそが、核のない世界への重要な転換点であると主張します。同時に、持続的な平和を維持する基
盤整備のために、市民社会が果たすべき役割と責任も痛感しています。我々が、様々な違いを超えて、皆同じ人類の一員であるとの同胞意識を高めることができれば、多様性が尊重され、紛争を平和的に解決する社会を築くことができるでしょう。我々は、市民社会の幅広いパートナーと力を合わせて、このような持続的な平和の基盤をなす相互理解の促進にも努力を継続します。

 結びに、我々は全ての国々に対し、この公開作業部会に積極的に参加して、建設的な議論を始めることを重ねて強く求めます。各国の為政者はそのために真剣かつ誠実な努力をして下さい。我々も市民社会の一員として、協力を惜しみません。挫折し、対抗意識
を深め、失望し、好機を逸してきたこれまでとは異なり、2016 年は世界の核軍縮に大いなる進展をもたらす年となるよう、総力を傾けたいものです。

 国や地方自治体と共に、女性、青少年、法律家、宗教指導者、医療従事者、企業家、研究者、教育者、芸術家、スポーツマン等々市民社会の多様な構成員が力を合わせれば、時代を変革できます。いまこそ、立場を超えて、国際社会の共通利益のために協力すべきときです。この大切な仕事を一緒にやり遂げようではありませんか。

2016年1月22日

平和首長会議
会 長 広島市長(日本)
副会長 長崎市長(日本)
副会長 ハノーバー市長(ドイツ)
副会長 ボルゴグラード市長(ロシア)
副会長 マラコフ市長(フランス)
副会長 モンテンルパ市長(フィリピン)
副会長 マンチェスター市長(イギリス)
副会長 アクロン市長(アメリカ)
副会長 イーペル市長(ベルギー)
副会長 ビオグラード・ナ・モル市長(クロアチア)
副会長 グラノラーズ市長(スペイン)
副会長 ハラブジャ市長(イラク)
副会長 ブリュッセル市長(ベルギー)
副会長 フォンゴトンゴ市長(カメルーン)
副会長 メキシコシティ市長(メキシコ)
副会長 フロン市長(ノルウェー)
理 事 バンコク知事(タイ)
理 事 フリマントル市長(オーストラリア)
理 事 セメイ市長(カザフスタン)
理 事 サラエボ市長(ボスニア・ヘルツェゴビナ)
理 事 コーチ市長(インド)
理 事 モントリオール市長(カナダ)
理 事 ウェリントン市長(ニュージーランド)
理 事 サントス市長(ブラジル)
理 事 カルタゴ市長(コスタリカ)
理 事 ボゴタ市長(コロンビア)